Al basilico sole e acqua
こんにちは。寒いながらも冬の陽だまりが気持ちのいい今日この頃、いかがお過ごしですか?節分にはたくさんの福をお招きになったでしょうか?さて、今年のお便りは、皆さんの2014年が香り高く豊かな1年になることを願い、イタリア料理で使われているハーブをトピックにお届けしたいと思います!第1回目はイタリア料理の代表的なハーブの一つ、バジルについてのお便りです。
正式にはOcimum basilicumという学名がついているバジル。インド原産のシソ科の一年草です。日本では、現在は「バジル」、「バジリコ」と呼ばれ主に食卓で親しまれていますが、古くは民間の漢方薬として用いられ、種を目の中に入れてゴミを取ったことから「メボウキ」(=目のホウキ)と呼ばれていました。
一方、イタリア語でバジルを意味するお馴染みの単語basilicoは、ラテン語のbasilĭcumがもとで、さらにはギリシア語のβασιλικόνが語源となっています。元来は「王様の葉」という意味があり、古くからさまざまな用途があったことにちなんでいます。ガリア人はバジルを神聖な植物とし、特別な儀式を経て身を清めた人にだけ栽培を許していました。インドでもバジルは聖なる植物とされ、寺院の周りに植えられていました。また、エジプトではミイラを用意するための香油調合に用い、ローマ人は調味料や媚薬や傷を治す特効薬として役立てていました。
多様な効用と同じく、バジルが象徴する意味もバラエティ豊かです。「憎しみ」、「あなたからの侮辱を忘れない」などという物騒な花言葉から、「恋の媚薬」、「恋する乙女はバジルを窓辺に飾る」というロマンチックな民間伝承まで様々です。
ジェノヴェーゼ・ペースト、ピッツァ・マルゲリータ、カプレーゼなどなど、バジルを使ったイタリア料理も数えきれないほどあります。おおかたのハーブと同様、温かい料理に入れる場合は風味を損なわないように最後の最後に加えます。葉は包丁で切らずに、手で千切ったり潰したりするのが風味を最大限に引き出すコツとされています。
バジルの育成には、「Al basilico sole e acqua, ai bambini poppa e pappa(バジルには太陽と水、子供にはミルクとごはん)」と言われように、温かい場所とたっぷりの水やりが必要とされています。また、昔の農家では「悪口雑言を吐きながら種をまくとバジルが元気のよい大きな葉を付ける」と言われていたようで、この迷信から「cantare il basilico(思い切りののしる)」という表現も生まれました。
時にうっとりと愛する人を想い、時に罵声を浴びせながら(!?)、大切に大切に育てたバジルで、食卓に香りと彩りをプラスしてみてはいかがでしょうか?
*当記事は2014年2月に、公益財団法人 日伊協会のサイトで紹介されています。