シエナにくると誰しも必ず覚えてしまうのが、この歌。
サッカーやバスケットボールの試合で歌われたり、コントラーダごとに言葉を変えて歌われたりするお馴染みの「あの歌」です。基本形ともいえる本来の歌詞を見ると一目瞭然のシエナ賛歌です。
Nella piazza del Campo
ci nasce la verbena
viva la nostra Siena
viva la nostra SIENA
Nella piazza del Campo
ci nasce la verbena
viva la nostra Siena
la più bella delle città.
この歌は通称『ヴェルベーナ』と呼ばれ、ことあるごとにシエナの人々が熱唱します。パリオ祭で優勝したコントラーダの歌う『ヴェルベーナ』はその頂点。「あぁ、この町に生まれてきて良かった。本当に良かった。あぁ、シエナ最高。あぁ、幸せ」と、コントラーダや町への愛が涙とともにほとばしります。
つまり、『ヴェルベーナ』は魔法の歌。このメロディーが流れると、人々の心にはシエナのエッセンスを凝縮したカンポ広場のイメージが走馬灯のよ うに浮かびます。やわらかな丘にそって敷き詰められたレンガ、おしゃべりの声、青空にそびえるマンジャの塔、スープの臭い、月に輝くゴシック建築、パリオ の熱気、馬の汗、冬の日向ぼっこ、夏の夕涼み…。
さて、このヴェルベーナ。日本語ではクマツヅラと呼ばれる植物で、カンポ広場に敷き詰められたレンガの隙間に生えています。
ここ数年、ヴェルベーナの草を使ったリキュールが再び人気を集めているようで、カンポ広場周辺のエノテカなどでシエナの特産品として売られています。もともとヴェルベーナは薬草として利用されてきたこともあり、その特徴を生かして消化を助ける食後酒になっていて、グラッパほどではないもののアルコール度数は高めです。
また、erboristeriaと呼ばれる薬草を使った製品を取り扱うお店にはお茶や湿布などもあるようで、お酒が合法に、または体質的に飲めない場合はこんな風にヴェルベーナを味わってみるといいと思います。
秋の夜長、『ヴェルベーナ』を心で奏でながらお茶や薬草酒を飲んで、シエナに想いを馳せてみませんか?